契約の損害利率

契約の損害利率

契約(不履行時)の損害利率はいくらなのかをまとめました。

以下のような方に有用な内容です。

  • お金を支払ったのに売主が目的物を引き渡さない。
  • 買主が支払い期限を過ぎてもお金を払わない。

このような困った場合に備えて予め契約書に期限を超過した場合の遅延損害金の利率を記載したいけど、利率はいくらにすればいいのか?
遅延損害金とは別個で違約金を定めても良いのか?

この記事では、このようなお困りごとが解決できます。

事業者と個人の場合

年14.6%

※ 金銭消費貸借契約には適用されません。金銭消費貸借契約はこちら

個人と個人、または事業者と事業者の場合

当事者間で取り決めた額
ただし、暴利(民法第90条)となる場合は公序良俗違反で無効となる場合があります。

※ この項目では不動産の売買契約などを想定しており、金銭消費貸借契約は別になります。

不動産の売買などの場合、売主、買主いずれの債務についても、暴利行為(民法第90条)に当たらない限り、遅延損害金と違約金を別に定めることは、契約自由の原則の範ちゅうの問題であって、当事者が認識している限り有効です。

民法第90条

(公序良俗)
第九十条 公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする。

法定利率

当事者間で何の取り決めもない場合は、法定利率が適用されます。

年3%

民法404条2項

(法定利率)
第四百四条 利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、その利息が生じた最初の時点における法定利率による。
2 法定利率は、年三パーセントとする
3 前項の規定にかかわらず、法定利率は、法務省令で定めるところにより、三年を一期とし、一期ごとに、次項の規定により変動するものとする。
4 各期における法定利率は、この項の規定により法定利率に変動があった期のうち直近のもの(以下この項において「直近変動期」という。)における基準割合と当期における基準割合との差に相当する割合(その割合に一パーセント未満の端数があるときは、これを切り捨てる。)を直近変動期における法定利率に加算し、又は減算した割合とする。
5 前項に規定する「基準割合」とは、法務省令で定めるところにより、各期の初日の属する年の六年前の年の一月から前々年の十二月までの各月における短期貸付けの平均利率(当該各月において銀行が新たに行った貸付け(貸付期間が一年未満のものに限る。)に係る利率の平均をいう。)の合計を六十で除して計算した割合(その割合に〇・一パーセント未満の端数があるときは、これを切り捨てる。)として法務大臣が告示するものをいう。

約定利率

一方で、当事者間で取り決めをする場合は、以下のようにします。

公序良俗に反しない程度の利率で当事者同士で決定する。

利息制限法1条を根拠に利率を定めることで暴利行為(民法90条)に反しない利率として当事者間で契約することが最善だと考えます。

民法419条

(金銭債務の特則)
第四百十九条 金銭の給付を目的とする債務の不履行については、その損害賠償の額は、債務者が遅滞の責任を負った最初の時点における法定利率によって定める。ただし、約定利率が法定利率を超えるときは、約定利率による
2 前項の損害賠償については、債権者は、損害の証明をすることを要しない。
3 第一項の損害賠償については、債務者は、不可抗力をもって抗弁とすることができない。

事業者と消費者の契約で、金銭消費貸借契約以外の場合

例えばクレジットカードのショッピング枠のような場合。

消費者契約法9条2号

(消費者が支払う損害賠償の額を予定する条項等の無効等)
当該消費者契約に基づき支払うべき金銭の全部又は一部を消費者が支払期日(支払回数が二以上である場合には、それぞれの支払期日。以下この号において同じ。)までに支払わない場合における損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項であって、これらを合算した額が、支払期日の翌日からその支払をする日までの期間について、その日数に応じ、当該支払期日に支払うべき額から当該支払期日に支払うべき額のうち既に支払われた額を控除した額に年十四・六パーセントの割合を乗じて計算した額を超えるもの当該超える部分

利息制限法4条

(賠償額の予定の制限)
第四条 金銭を目的とする消費貸借上の債務の不履行による賠償額の予定は、その賠償額の元本に対する割合が第一条に規定する率の一・四六倍を超えるときは、その超過部分について、無効とする。
2前項の規定の適用については、違約金は、賠償額の予定とみなす。

事業者と消費者の契約で、金銭消費貸借契約の場合

例えば事業者(俗にいうサラ金)から消費者がお金を借りる場合。

金銭消費貸借契約上の債務を履行しない場合の遅延損害金の利率は、利息制限法4条により、利息制限法1条に定める上限利率の1.46倍になります。

利息制限法1条

(利息の制限)
第一条 金銭を目的とする消費貸借における利息の契約は、その利息が次の各号に掲げる場合に応じ当該各号に定める利率により計算した金額を超えるときは、その超過部分について、無効とする。
一 元本の額が十万円未満の場合年二割
二 元本の額が十万円以上百万円未満の場合年一割八分
三 元本の額が百万円以上の場合年一割五分

利息制限法4条

(賠償額の予定の制限)
第四条 金銭を目的とする消費貸借上の債務の不履行による賠償額の予定は、その賠償額の元本に対する割合が第一条に規定する率の一・四六倍を超えるときは、その超過部分について、無効とする。
2 前項の規定の適用については、違約金は、賠償額の予定とみなす。

遅延損害金の計算方法

遅延損害金 = 元金残高 × 遅延損害金の利率(年利) ÷ 年間日数(閏年の場合は366)×遅延日数

まとめ

事業者と個人(金銭消費貸借契約以外)

  • 取り決め無し 年3%
  • 取り決め上限 年14.6%

個人と個人、事業者と事業者

  • 10万円未満 年20%(上限)
  • 10万円以上100万円未満 年18%(上限)
  • 100万円以上 年15%(上限)

事業者と個人(金銭消費貸借契約のみ)

  • 年1.46%

参考文献

記事を作成する際に参考にさせていただきました。有意義な情報のご提供を感謝致します。

債務整理に強い弁護士による無料相...
利息制限法とは?弁護士がわかりやすく解説 - 債務整理に強い弁護士による無料相談【デイライト法律事務所... 利息制限法は、お金の貸し借りに伴う利息や遅延損害金などの上限を定める法律です。平成22年6月に出資法・貸金業法が改正され、利息制限法の上限を超える金利を取ると刑罰...
弁護士法人みずき
遅延損害金の利率14.6%は法律の範囲内?民法改正のポイント - 弁護士法人みずき 遅延損害金の利率は当事者間での取決めがなければ3%と法律で定められていますが、14.6%と定められていても違法ではありません。本記事では、遅延損害金の利率が3%を超える...

公益財団法人 不動産流通推進センター
2011年6月 売主の履行遅滞に対する遅延損害金
※ 資料作成日以降に法律が改正されており数値が若干違う箇所があります。

https://www.retpc.jp/archives/4839

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この記事を書いた人

センチュリー21 とみたプロスの代表
宅建士、特定行政書士
不動産屋は客付けを得意としている。
行政書士は市街化調整区域の土地、建物についての許認可を専門分野としている。

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